森山’s Honey Bucket 31
本人にとっては何気ない行動が、ときに他人に大きな印象を残す場合がある。
それは素敵なことでもあり、逆に恐ろしいことでもあるのが…。
中2理科授業で軟体動物イカの解剖実習をした。一昨日のことだ。
解剖実習に使ったスルメイカは折角なので毎回食べることにしている。
今回はスパゲティーにした。
麺は7分間茹でたが、時間の都合もありソースは市販のレトルトを使用した。
ひとつ目の任務を終えたイカはまず炒められ、ソースに次に麺にからめられた。
イカ入りミートスパゲティーの完成!
普段あまり勉強熱心とは言えず、従って今のところ成績は芳しくない、
そんな女の子を預かっている。
(本人曰く「今回の中間テストは自分なりにはよく取り組んで成績も上がった。」とのこと、ちょっと笑みさえ見えるのだが…)
フライパンの中で美味しそうに湯気を上げているスパゲティー。
「さあ熱いうちにいただきなさい!」と僕が言うと。
「先生は食べへんの?」と彼女。
「う~ん、ほなちょっとだけ・・・いただこうか。」
気がつけば、彼女はその日のスタッフ全員分のスパゲティーを小皿にたいへん美しく盛り付け、仕上げにフライパンの中のソースやイカの身をスプーンですくい取ってはそれぞれの皿に見栄え良くかけてくれていた。丁寧で心のこもった仕草に見えた。
スタッフ皆美味しくいただいた。もちろん子どもたちも喜んでくれていた。
ごちそうさまの後、最後に「片付けタイム」となった。
僕は彼女の片付け振りを自分の片付け仕事の傍ら見るとはなく見ていた。
彼女は色々な洗い物をこなしたあと、机の拭き掃除に移った。
感心した。
油が飛び散っていたからかもしれない。イカのにおいは独特で取れにくかったからかもしれない。彼女は幾度も幾度も机を拭き直してくれていた。そして最後に水周りに飛び散っていた水しぶきも丁寧に拭いてから、小さく「よしっ。」と言った。少なくとも僕にはそう聞こえた。
完璧だ…。
完璧だ…。
失礼ながら、こんな行き届いた仕事振りは、平素の英語・数学といった科目の勉強のときにはお目にかかったことがない。
塾なのだから、成績を上げる手伝いをし、その結果としてそれぞれの子たちに「自信」を獲得してもらうことが、求められる大きな仕事である。日々それを忘れたことはないつもりだ。
しかし、いわゆる成績以外のことでも、それぞれの子たちがキラリと光り輝く場面に出会えると何だか嬉しくなる。その子の大切な一面として、新たに印象にとどめることができるし、素敵な人なのだと肯定できる材料を増やせるからである。
その日の彼女の行動は確かに彼女を輝かせていたし、そばにいた僕を素敵な気持ちにさせてくれた。
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