森山's Honey Bucket 51
「先輩を囲む会」は、とてもうちの学園らしいと感じる行事だ。
現役の中3生を前にして、1歳年長である高1の先輩たちが集い、話をしてくれる。
「志望校はいつ頃どのような理由できめましたか?」
「11月頃五ツ木模試の志望校の合格判定はどうでしたか?」
「不得意科目はどうして乗り越えましたか?」
「この時期、一日の勉強時間はおおよそどれほどでしたか?」
「もう勉強なんていやだ、と思ったことはありますか?」
「これから入試までどんな心構えでいればいいでしょう?」
のように、先輩が中3生だったころの経験を尋ねる質問がある。
また
「高校生活は楽しいですか?」
「高校での勉強はやっぱたいへんですか?」
「高校のクラブ活動は中学より厳しいですか?」
「バイトはしていますか?」
「恋人できましたか?」
と言った、先輩の高校生活について尋ねる質問もある。
順に送られてくるマイクを手にしながら、ある先輩は流暢に、ある先輩は緊張に押しつぶされそうになりながら、でも一所懸命に答えてくれる。
それがいい。
先輩への質問は、中3生自ら挙手してするのか…といえば、なかなかそうはいかない。
ほとんど初対面の先輩と後輩だから、それは無理もないことだ。
そこで、真也学園長が巧みな司会で、中3生に成り代わって先輩に質問されたり、
中3生を指名して質問を引き出されたり、先輩・後輩双方の緊張をうまく解きほぐしながら会を進めていかれる。だから、あっというまに会は大いに盛り上がっていくのだ。
毎年、「今年の会も素敵だった…。」と感じる。
「先輩を囲む会」は、学園の素晴らしき伝統となった行事だが、何を隠そう35年前僕が現役中3生だった大昔にもうすでに伝統行事となっていたようだ。
当時のそれは今とは少し趣向が違いっていた。
各高校から1人ずつ先輩が来られ、「では次、○○高校の説明を○○先輩にして頂きましょう。」という高校紹介型の「会」だった。
僕は、憧れている高校が説明される順番を固唾を呑んで待った。
その高校の説明には、同じ小学校の1年上級だった先輩が立たれた。
先輩は、まず大きな紙に書いてきた学生食堂のメニューと値段の一覧表を僕たち後輩に見せるところから話をスタートされた。「自分が通っている高校のことが大好きだ。毎日楽しくてしかたない。是非君たちもおいで!きっと後悔はしないよ。」
どの話も僕の気持ちを大きく大きく膨らませるものだった。
その証拠に…
「先輩を囲む会」を終えた直後、僕は駅までの道のりをひたすら走り、プラットホームへも駆け上った。
早く家に帰り着きたかった。
帰って勉強したかった。
一度はくすぶっていたいた憧れの高校への心の炎が、またメラメラと音を立てて燃え立ちはじめた。そんな興奮に包まれた帰路だった。
後輩を思う先輩たちがいて、その声を受け止める後輩たちがいる。
そこには強制も脅しも存在しない。
ただ応援する者とされるもの者たちがいるだけだ。
この温かい空気が、自らの内燃機関に届けられてこそ、人は動き出すのだ、きっと。
そして、こんな「会」を50年以上開催し続けていること。
まさしくこれが学園らしいと感ずる。
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