森山’s Honey Bucket 21
中学生になったら憧れのテニスを始めよう、そう思っていた。
しかし僕が通うことになった精華中学にはテニス部がなかった。
(春休みに引越しをし、新天地で迎える中学。知らないことだらけだった。)
ならば…と覗いた剣道部は部室のあまりの悪臭に、もう一度ここを訪ねる気が失せた。
(僕の鼻は臭いものにたいそう敏感だった。当時は…)
次に野球部。監督の加藤先生のノックを受ける先輩や同輩の姿が格好よかった。
気持ちは決した。しかし、五分刈りのグリグリ頭をした自分を想像するのは悲しかった。
散髪屋さんのバリカンは一撃で坊ちゃん刈りだった僕の人相を変えた。
散髪屋のおじさんはまず、僕の頭のど真ん中に幅5cm程の鮮やかなバリカンラインを描いた。
まさにその直後、とびらの向こうの部屋から奥さんらしい人の声がし、呼ばれるままに店主はバリカンを置いて部屋に消えた。あろうことか店主は夕食を取り始めたようだ、お客様である僕を放置して…。
その間、取り残された僕は目の前の鏡に映る自分をただ呆然と眺めていた。そこには頭を完璧に分断する滑走路にも似たバリカン跡が前から天辺を経由してうしろのほうまで1周していた。
ちょっと泣きそうになった。
やがて「ごめんごめん。」と出てきたおじさんは、今食べ終えたばかりの夕食の香りをたくさん撒き散らしながら、しかし手際よく僕の頭をグリグリに丸めてくれた。
「はいできあがり。」僕の頭を撫でながらおじさんは言った。
それはそれでいい時代だったのかも?
ちょっと好きだったSさんの家の前を全力で走り抜け、家に向かった。
どうして僕は高校の美術部で油絵に夢中になったのか…
そんなことをブログに記そうと思いつつパソコンの前に座ったつもりが、なぜだか「計画変更!」こんなことになってしまった。