森山’s Honey Bucket 18
「先生…○○やけど…。
あかんかった。うん、不合格やった…。
だいたい予想しとった。
…元気やで。つぎに向けて頑張る。」
彼の声の後ろに電車がガードを走る音が聞こえる。
合格発表からの帰り道にちがいない。
きっと目の前が真っ白になっただろう。
心臓は激しく鼓動したことだろう。
その場にしゃがみこんでしまうほどの脱力感が心を覆っていただろう。
涙が頬をつたったかかしれない。
しかしおそく彼は
少しの時間をあけ
明るい声を出す準備を整えてから
報告の電話をしてきてくれたのだ。
成績も内申も合格するための力を彼は持っていた。
しっかり合格を手にしてくれるはずだった。
しかし当日得意の数学でまさかの苦戦を余儀なくされたようだ。
受験には魔物が潜む、とよく言われる。
彼もまたその魔物に襲われた一人だったのだろうか?
しかしその日、他の誰よりも早く彼は教室の自習ブースに現れた。
後期入試に向けた勉強を始めるために…
「なあ○○君、君はその心に描いた夢を一度ボロボロに破壊されてしまった。
でもここから歩みだす次の新しい一歩が、どうか君にとっての最良の道となり、
これこそが素敵な人生だったと、自信と喜びをもって振り返ることのできる3年間にして
ほしい。先生からのお願いです。」
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