●むこう向きのおっとせい その63
年末に、30年ぶりになる卒業生から電話をもらった。
卒業後一度も会っていなかったのだが、思い立って連絡をくれたのだ。
本好きの、無邪気だった女の子も、人生の荒波を幾たびか乗り越え
今は悩みを持った人たちの心のケアを、ボランティアでしているとのことだった。
その彼女が関わっている「とれぶりんか」という団体が、阪神淡路大震災をテーマにした
「おじいちゃんの古時計」という劇を上演するので是非見に来てほしいと、
優待券を送ってくれたので昨日見に行った。
会場は尼崎の「ピッコロシアター」中ホール。
小さな会場だが席は満杯。
オカリナの演奏や弾き語りの後、劇の上演が始まった。
素人の演劇なのでお世辞にも上手いとは言えないが、一生懸命さと真剣さは伝わってくる。
ストーリーは
「地震の起こった後、耳の聞こえない少年竜夫と脳性マヒで車いすの少女明子が、竜夫のおじいちゃんの安否をたずねて、被災間もない神戸にボランティアの旅に出かける。がれきの中でボランティアに取り組む他の障害者や、家族や友人を亡くしながらも他人のために一生懸命な女性に出会うことで、二人は成長していく。」というもの。
代表の中川雄二さんも震災の体験者で、
「ついさっきまで当たり前のようにあった生活が、命が、わずか20秒余りの激震で一変してしまったのです。かけがえのないものを失くしてしまった人々の喪失感、虚無感。未だに口もきけずに打ちのめされたままの人たちがあちらこちらにいました。」
中学校の教諭だった中川さんは、教え子の障害者と被災地でボランティアに取り組まれる。
「・・・さまざまなドラマがありました。人と人がつながることの大切さ、今一番私たちの社会に求められるもの・・・、その全てがここにあったように思います。」
「何としても風化させてはならない。被災地の痛みを通して、世界中の若い世代をつないでいくことが出来ないものか。私たちがこの芝居を温め続けた想いがここにあります。」
と挨拶された。
実際に被災していない私にとって、この人の、また、この劇を演じた人たち、そしてそれを支えている人たちの思いをどこまで感じ取れるか心もとないが、伝えられたメッセージは心に留めておこうと思った。
今日で阪神・淡路大地震が起きて16年目になる。
「6434人の命が奪われた阪神大震災から、17日でまる16年となる。10万棟を超える建物が全壊した被災地は、震災復興土地区画整理事業が近く完了する見通しとなり、街づくりにひとつの区切りを迎えた。ただ、復興公営住宅の独居の高齢者が全世帯の4割を占めるなど、新たな課題も生じている。 」
と新聞には書いてある。
記事を見るだけで何か分かったような気になってしまうが、
「一人一人には歴史があり、それぞれにかけがえのないものなのです。」
というこの劇のシスター役の人の台詞の通り、こんな記事の裏側には、想像もつかないようなドラマがあることを見落としてはいけないと、この劇を見て改めて感じた。
というこの劇のシスター役の人の台詞の通り、こんな記事の裏側には、想像もつかないようなドラマがあることを見落としてはいけないと、この劇を見て改めて感じた。
ほんとにいい機会を与えてもらえた。
30年ぶりの教え子は面影をたっぷり残したまま、真剣に生きていた。
またこれからも応援していきたいと思う。
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