森山's Honey Bucket 45
我が家に「仮免許練習中」なるプレートが2枚ある。
娘が自動車教習所で仮免の試験に合格したとき、手引きを見ながら自作したものだ。(我ながらよくできている。)
娘は運転免許証を得てほんの1年程の初心者だが、なかなか上手な安全ドライバーだ。
最近は気軽に同乗できるようになった。
「どこか近くへドライブでも行って来たら?」と母親が自分の自動車の鍵を渡そうとする。
「行き先など決めずふらっと行くのがいい。」などと僕も言う。
しかし返事はいつも
「やめとく。行くのはいいが絶対帰って来れない!帰り道がわからん…」
なるほど…兄と違い方向感覚はたしかに怪しい。地図も読める方とは思えない。
妙に納得。
初心者といえば自分のことも思い出される。
ドライバーとしてのそれではない。
授業をしっかり務めるということは今もなお難しいことだが、
この仕事に就いて10年頃まではさらに怪しかった。
「授業が勝負。」
「授業の成否はどれだけ準備をするかにかかっている。」
「『今日、このことだけは必ずすべての子どもたち理解させるぞ!』そんな信念を持って授業に臨むべきだ。」
「しっかり教材研究することこそが価値ある授業を創造する唯一の方法だ。」
これらはすべてヒゲ先生の教えである。
当時1クラス30名を数えることもあった教室で、
皆にこちらを向いてもらう授業をすること。
ひとつでも多くのうなずきが得られる授業をすること。
子どもたちには生き生きした時間を過ごさせ、かつそこにしっかりと学びを共存させること。
今も難題 当時はまさしく大難題
どんなふうに説明すれば理解してもらえるか?
子どもたちがイメージしやすい例を取り上げ、いくつものストーリーにした。
子どもたちがイメージしやすい例を取り上げ、いくつものストーリーにした。
先輩の先生に教わりながら授業計画を練り、来る日も来る日もプリント教材を手作りした。
夜を徹して予備実験したり、実験装置を作ったりもした。
時には生徒のいない教室の黒板を背に、身振り手振りの練習授業もした。
「わかったで!」と言ってもらうために。
台本を書いて授業に臨んだことも何回もあった。
授業がここまで進んだら、こんな話題を出してみる。
「そういえば…」と言いつつ、おもむろに脱線話を展開する。
この話、子どもたちはきっと喜んで聞いてくれるはずだ。よい気分転換になる!
いや、ほんとうに聞いてくれるかな??
もしかして全く反応してくれず、授業の雰囲気が取り返しのつかぬ程悪くなったらどうしよう…
不謹慎に聞こえるかも知れないが、こんなことも…。
子どもたちの予期せぬ発言に臨機応変に対応する練習として、
結婚間もない嫁を相手に「ボケとツッコミ」の掛け合い練習を毎晩続けた時期もあった。
子どもたちと一体になる授業を心に描いた。
しかし何度も何度も叩きのめされた。
その都度なんとか気を取り直してやってきた。
「この先生の話はどんなことであれしっかり聞こう。」
と子どもたちに思ってもらうことに、初心者マークを胸に貼った当時の自分は、
今よりも貪欲であった気がする。
そろそろ年齢も大台。
今さら心身ともフレッシュでキラキラした自分にカムバックするのは絶望的だ。
しかし、子どもを引きつけることに情熱を傾け、日々工夫をこらしていた「仮免許」時代の自分を時折思い出したい。
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分数の授業でアンパンマンが悲鳴をあげながら切られていく。
そんな森山先生の授業が私の血肉となり、
そんな森山先生の姿とトークが私の性格に多大な影響を与え、
今も助けられている。
私の前では常にキラキラしたプロのレーシングドライバーだった。