森山’s Honey Bucket 13
耳が切れるような凍てつく夜でした。
藤原学園の中3生だった僕は、
今里駅0時34分発の高安行きに間に合うよう、
学園の教室(今里本部校)を飛び出し、
最終電車の到着とほぼ同時にホームに駆け上がる日々でした。
まだ教室で勉強している友人たちよりも、一足早く教室を離れる僕でしたが、
自分なりには頑張っているつもりだったし、
まあ、ある種の満足感を抱きながらの終電での帰宅でした。
家に帰るとまず、
大好きだったカップスターラーメンを食べ、
もう一頑張り…と、電話帳に向かう中3生でした。
しかし、その夜は帰宅した瞬間からいつもと違っていました。
玄関にお父ちゃんが仁王立ちしているのです。
一瞬のうちに「何かある…」と恐怖を伴いながらの判断ができました。
案の定…
「隆伸!ちょっとついて来い。」
玄関に鞄を置くのがやっとという状態で、
ずんずん先を歩いていく父親についていきました。
中小の工場が並ぶ路地を抜け、
泥道を進んだ先に到着したのは、
とある神社でした。
父親は裸電球が頭上に灯る石の長いすを指差して、
「そこに座れ!」と言いました。
氷のようないすでした。
僕を座らせ、たしか父は仁王立ちのままで、
「お前の勉強には性根が入っていない。
第1希望の高校にほんとうに進学しようとしているのか!
わしにはお前の本気がまるで伝わってこない。
根性の無いことでは何をしても上手く行くためしはない。
わしは、お前に○○高校以外受けさせるつもりはまったく無い。
受けて駄目だったなら、森山商会を手伝え。
逃げて選んだような高校にいく必要は無い。」
情けなくて
腹が立って
悔しくて悔しくて
「僕だってやってるわ。」
くらいしか反論ができませんでした。
しかし実は
父親の言う通りでした。
慢性的な行き詰まり感がありました。
このままでは第1希望校はだめやろうなあ…と日々あきらめ心地でした。
でも、僕が
勉強をしている振りを必死でしていたのは、
勉強していない時の自分の不安を消すため?というよりは、
むしろ
「そんなけ頑張ってんねんから、もうええやん。」
「無理せんでええで…」
という慰めの言葉であり、
自分が目標としているところをあきらめて、より安全と思われる場所へ切り替えることについて、
誰かに認めてもらうことで自分も納得し、正当化しようと考えていたのだと思います。
僕の知りうる限り、何ごとも有言実行、言い出すと決して気持ちを曲げない父親の、
そんな迫力ある態度に
僕の甘えは、行き着くだろうと予測していた「安住の地」を奪われました。
もうはっきりとは覚えていませんが、
ほんとうの闘いはこの日を境に始まったのかもしれません。
幸い合格できた高校で
僕は最高の3年間を、
多くの友だちに恵まれながら過ごすことができました。
ささやかではあるけれど、自信といえるものを得ることができたのは、
あの冷たい石の長いすの上で震えながら父の言葉の聞いたのが出発点です。
今でも感謝しています。
ちなみに後に母親に聞いたところ…
僕が私立校の併願に合格したとき、
「これで次はいよいよ公立本番。」と言う母を尻目に、
「それはもうどっちでもええこっちゃ。これで息子に通える高校ができた!よかったよかった。」と父は手放しの喜びようだったそうです。
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森山’s Honey Bucket 12
先日家内と山に登りました。
奈良県と三重県の県境に位置する高見山。
“関西のマッターホルン”
(何やら浪速のモーツアルト・キダタローっぽいですが…)
とも称せられるだけあって
遠望すると、なかなか格好のよい山です。
標高は1248m。
霧氷とは(『ウィキペディア(Wikipedia)』の解説によれば
「氷点下の環境で、空気中の過冷却水滴もしくは水蒸気が、
樹木その他の地物に衝突して凍結もしくは昇華することでできる、
白色~無色透明の氷層の総称。いわば自然現象としての着氷現象。
(一部省略)」
とあります。
北斜面に風を遮る峰が無いためか、稜線付近に吹き上げる北風は
昨年、たいした冬山対策をせず(実はアイゼンも持たぬまま)、
初チャレンジしたときは、何度も尻餅をつく有り様でした(恥ずかしい)。
ですので、今年はそれなりの装備は用意して臨みました。
「霧氷号」という名のバスが近鉄電車の最寄駅から運行されている
ほどの人気?のスポットだけあって、登山口で準備をする登山者の数は
かなりありました。
これだけお連れがあれば、コースアウトして遭難といった危険は無かろう、
と思われたほどです。
「僕は歳をとっているので、先に出発させていただきますよ…」
とおっしゃる初老の紳士(60代半ば?)がおられました。
「どうぞどうぞ」
とお見送りして程なく我々も出立しましたが、
あっという間に老紳士の橙色のジャケットは小さくなり、見えなくなりました。
その後もたくさんの方々に、「どうぞお先にいってください。」と
道を譲りつつ登山を続けました。
お若い方も確かに多くありましたが、
御歳を召されていることが容易にわかる登山者の多さに驚き、
またその方々と比べ、自分たちの体力の無さが際立ち、
しかし登ってきた甲斐はやはりありました。
頂上へ続く稜線付近のブナの枝々に、今年も霧氷は美しく、
海老の尻尾(えびのしっぽ)もしっかり成長してくれていました。
日帰り温泉につかって揉み解した程度では追いつかない
ももやふくらはぎの筋肉痛があったため、
おばあちゃんからもらったシップ薬をそこかしこに貼りまくりました。
ただシップの香りの奥に確かな達成感・充足感を覚えることができました。
高見山、ぜひどうぞ。
森山’S Honey Bucket 11
蒐英舎第49期生の皆さん、ご成人おめでとうございます。
成人式当日の写真を届けていただきました。
ありがとうございました。
どの方も立派になられましたね…。
嬉しいです。
僕は二十歳くらいから暫く、大きな錯覚をしていました。
「自分は親を超えた!」と。
その軽薄で根拠の無い自信は、
自分が家族を持ち、子どもを授かってから、
とんでもない誤解であった、と気づきました。
あなたがたも若いのだから
とんでもない勘違いや
失敗はきっとしますよね。
どうぞ どうぞ
ときどき
これまで健康にそして安全に過ごさせてもらえたことや
あなたたちを大切に育ててくださったご家族のこと、
にそっと感謝するってことですかね。
ご自分の大きな夢に向かって邁進ください。
森山’S Honey Bucket 10
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年は結婚25周年。
夫婦そろって50歳にもなる今年、
ささやかな(?)目標を抱いています。
夫婦して、大好きな富士山に初登山を果たすぞ!というものです。
いや、正直にいうと、
ここ2~3年中に富士山に初登山を果たすべく、
この節目の年に「挫折せず鍛錬する…」というものです。
NCY先生には
「それを実行するためには計画的なトレーニングを積む必要がありますよ。」
とかつてアドバイスをいただきました。
上本町校事務のNN女史(彼女は昨年登頂を果たす)からは、
「富士登山を考えている先生に、ひとつだけ大切なアドバイスをするとしたら、
それは『まず富士登山をしないこと』ですよ。」と暖かい言葉をいただきました。
目標の実現に向け計画的にコツコツと…ができない僕は、この正月も飲食三昧。
シェイプアップどころかますます丸々。
登山には不適切な身体です。
でもブログに書いちゃいましたから
目標は富士山を心に定めつつ、まずは天保山くらいから始めてみます。
ブログのネタ?作りのためにも山に登るぞ!
森山’S Honey Bucket 9
平成21年の大晦日を迎えました。
このブログを読んでくださっている皆さんは
おそらくきっと藤原学園の応援者でいてくださっている方々ですね?
そんな方々に支えていただいたからこそ、
藤原学園は藤原学園らしく、今年1年の任を果たしてこれたのだ…
皆さんから励ましをいただき続けたからこそ、
スタッフ皆が気持ちよく頑張り抜けたのだ…、
心からそう感じます。
ありがとうございました。
来る新年も、皆さんにとって、また皆さんのご家族の方々にとって
素晴らしい年になられますことを、お祈り申し上げます。